碧き記憶が語る夜_残響

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碧き記憶が語る夜_残響 [2025/11/06] メンバー碧き記憶が語る夜_残響 [2025/11/07] (現在) メンバー
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 霊薬研究との関係も――地元では「切り裂きジャッキー」再来の噂 霊薬研究との関係も――地元では「切り裂きジャッキー」再来の噂
- フォンシェンの名門道場「影蛇館(えだかん)」の現道場主、**シニィク氏(38)**が今月初旬より消息を絶っていることが分かった。+ フォンシェンの名門道場「影蛇館(えだかん)」の現道場主、**シニィク氏(38)**が今月初旬より消息を絶っていることが分かった。
  一部では、道場地下に古来より伝わる“霊薬の隠し庫”が存在するとの噂もあり、霊薬をめぐる争いの可能性が取り沙汰されている。  一部では、道場地下に古来より伝わる“霊薬の隠し庫”が存在するとの噂もあり、霊薬をめぐる争いの可能性が取り沙汰されている。
  また、近隣住民の間では、かつて無差別殺人事件を引き起こした“切り裂きジャッキー”出現時に聞かれたとされる不気味な音――“カタカタカタ”が夜に響いているとの報告もあり、恐怖が広がっている。  また、近隣住民の間では、かつて無差別殺人事件を引き起こした“切り裂きジャッキー”出現時に聞かれたとされる不気味な音――“カタカタカタ”が夜に響いているとの報告もあり、恐怖が広がっている。
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 --> 集めた情報# --> 集めた情報#
-**情報2 調査結果**+**情報調査結果 名簿** 
 +君は机の上に置いてある名簿を見た。 
 +君たちのフルネームと職業が書かれている。恐らくノワもこの名簿を見つけて君たちにコンタクトをとったものと思われる。
  
 +〜〜
 +〜〜
 +_________________
 +ムニ=シンクレア ピアニスト
 +ノワ=タケナカ 探偵兼アークス
 +フヨウ=ディンライ 霊媒師兼アークス
  
-《ウェト・タイムズ》+アークとして呼ばれていないものもしくアークスでないものも数名いるようだ。
  
-発行日:ハルファ歴〇〇年〇〇日/第3181号+調査終了。
  
-見出+**情報2 調査結果 霊薬図鑑(送るやつ間違えてまた…)**
  
-「深夜の銀行に忍び寄る影——監視カメラを破壊した“無音の強盗”」 
  
-本文+出版:白玄書院/〇〇年(初版発行より9年経過) 
 +紙は日焼けで黄ばみ、端がめくれた頁にはかすかな鉄錆の匂いが染みついている。 
 +インクは褪せ、ところどころに黒い指跡がある。 
 +万年筆の跡で残された細い書き込みは、慎重な手で書かれたように見える。 
 +しかし、一部のページは強く押し込むような筆圧が残り、感情の揺れを感じさせた。 
 +君は書き込みのある頁について読み込むことにした。 
 + 
 +【水霊信果(すいれいしんか)】 
 + 
 +外見:半透明の青玉のような果実。触れると冷たい水滴が滴る。 
 +効果:服用者の内功を著しく高め、気の流れを極限まで研ぎ澄ませる。 
 +副作用:精神の均衡を失い、怒りや恐怖といった感情が極端化する。 
 +「飛燕館の地下」と書き込みがある。 
 + 
 +【焔心蓮(えんしんれん)】 
 + 
 +外見:紅蓮の花弁を模した結晶。中心は常に微熱を帯びている。 
 +効果:体温を高め、肉体の瞬発力と攻撃的気勢を増幅させる。 
 +副作用:怒りや焦燥が増す。 
 +「シンクレア家・研究棟地下3層冷却庫。生体反応ロック・虹彩認証。死後16時間までは可。夜間は自動封鎖。」と書き込みがある。 
 + 
 +【玄氷珠(げんぴょうじゅ)】 
 + 
 +外見:氷塊のように透明で、触れると一瞬で霜が広がる。 
 +効果:気の循環を鎮め、痛覚や恐怖心を麻痺させる。 
 +副作用:感情表現が乏しくなり、長期服用で肉体が冷えすぎて動かなくなる。 
 + 
 +【風脈花(ふうみゃくか)】 
 + 
 +外見:乾いた羽根のような花弁を持つ草。軽風に揺れると音を立てる。 
 +効果:服用者の動体視力と反射速度を短時間だけ極限まで高める。 
 +副作用:使用後、極度の倦怠感と関節痛を伴う。多用は命に関わる。 
 +外見:夜光を放つ薄紫の茸。闇の中で月光のように光る。 
 +効果:使用者の感覚を研ぎ澄まし、霊的存在の気配を捉えやすくする。 
 +副作用:現実と幻視の境界が曖昧になり、長期服用で精神錯乱を起こす。
  
-ディエンビエン南区にある第二商業銀行で今月3日未明、何者かが侵入し、金庫室の一部を破壊した形跡が見つかった。 
-被害総額はおよそ3億メセタ。 
-現場の監視カメラはすべて破壊されており、 
-内部映像は一切残っていない。 
-警備担当者の話では、警報装置が作動したのは午前3時14分。現場にはウサギ型の金のピアスが落ちていたとのこと。 
-捜査関係者によると、犯行は内部構造を熟知した極めて計画的なものである可能性が高いとしている。 
  
 調査終了。 調査終了。
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 しかし、ここ数年は手入れをされていないのか埃が被っている。 しかし、ここ数年は手入れをされていないのか埃が被っている。
  
 +調査終了。
 +
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 +
 +**情報5 調査結果:大量のノート**
 +
 +君は机の引き出しから積み上げられた十数冊のノートを見つける。
 +どれも端が擦り切れ、表紙には薄く汗の跡が残っている。
 +ざっと目を通すと、全てが練習記録のようだ。
 +日々の稽古内容、動きの分析、反省と目標、
 +その筆致は几帳面で、ところどころ紙がにじんでいる。
 +やがて、ある時期を境にノートの下部に日記のような記述が現れ始める。
 +---
 +「◯月☓日 今日は親善交流会があった。
 +師範代が“気持ちの整理に日記を書くといい”と言っていた。
 +試しに書いてみようと思う。」
 +「◯月☓日 またスーフェンが語火の途中で話しかけてきた。
 +“どうしても型がうまくいかない”と泣き言を言っていた。
 +聞いていると苛立つ。努力すればできるはずなのに。
 +できるまでやるのが努力だというのに。
 +彼女はまだ“努力”という言葉の意味さえ知らない。」
 +「◯月☓日 右腕の動きが鈍く、痛みが引かない。
 +医者に行ったら疲労骨折と言われた。
 +一ヶ月安静にしろと言われたけど、そんな時間はない。
 +一日休めば、取り戻すのに二日かかる。
 +テーピングで固めれば動ける。痛みくらい、問題じゃない。」
 +「◯月☓日 初めてスーフェンに負けた。
 +彼女が強くなったわけじゃない。
 +私の身体が、思うように動かないだけ。
 +情けない。努力が足りない。」
 +「◯月☓日 身体が自分のものじゃないみたい。
 +動かそうとしても、力が入らない。
 +骨が歪んだまま癒着していると言われた。
 +手術が必要らしい。
 +母さんが“縁談があるから、しばらく安静にして考えなさい”と言ってきた。
 +……今の私に、そんな気分になれるわけがない。」
 +---
 +最後のページの筆跡は乱れ、
 +文字の圧も弱々しい。
 +そこから先のページは真っ白だ。
 +インクの滲んだ指跡だけが、最後までノートを握っていた痕跡を残している。
 調査終了。 調査終了。
  
行 163: 行 239:
 調査終了。 調査終了。
 --- ---
- 
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 **情報7 ウェストタイムズ** **情報7 ウェストタイムズ**
行 202: 行 275:
  
 編集部註: 編集部註:
-フォンシェン島で発生した過去最大級の連続殺人事件。+クヴァリス西方諸島で発生した過去最大級の連続殺人事件。
 16名という数字の裏には、それぞれに家族、生活、そして物語があった。 16名という数字の裏には、それぞれに家族、生活、そして物語があった。
 “切り裂きジャッキー”がどこに潜んでいるのか、あるいは既にこの世にいないのか—— “切り裂きジャッキー”がどこに潜んでいるのか、あるいは既にこの世にいないのか——
行 220: 行 293:
  
 シンユェの強い押しで君はシーイェンガオを購入することになった。かなり甘い蒸し菓子のようだ。 シンユェの強い押しで君はシーイェンガオを購入することになった。かなり甘い蒸し菓子のようだ。
 +
 +調査終了。
 +
 +**情報9 調査結果 スーフェン**
 +
 +「前の道場主? それならシァイェンのことじゃないかな。
 +私が通ってた頃は、師父のライイェンさんと奥さんのクァシンさんが“飛燕館”って道場をやっててね。
 +でも、ライイェンさんが修行中に、クァシンさんは組手中の事故で亡くなっちゃったの。
 +それで跡を継いだのが、ライイェンさんのお父さん――リウイェンさん。
 +そのあと一時だけ帰ってきたシァイェンが、正式に道場を引き継いだんだけど……すぐに道場を売っちゃったんだ。
 +まあ、私の記憶違いじゃなければ、だけどね。」
 +スーフェンは笑いながら包み紙を折りたたむ。
 +「じゃ、私、肉まんが冷める前に帰るね!母さんにも持って帰ってあげたいから!」
  
 調査終了。 調査終了。
行 227: 行 313:
 1. 揚枝甘露(ヨンジー・ガムロ)         さいの目に切ったマルゴー、ポメロー、サゴ(サゴヤッシィのでんぷん)、ココナッツミルク、ミルクが入っています。とろっとした食感と甘い味わいが特徴です。800メセタ 1. 揚枝甘露(ヨンジー・ガムロ)         さいの目に切ったマルゴー、ポメロー、サゴ(サゴヤッシィのでんぷん)、ココナッツミルク、ミルクが入っています。とろっとした食感と甘い味わいが特徴です。800メセタ
 2. 飛天糖霜(フェィティエン・タンシュアン) 口溶けの軽い砂糖菓子。700メセタ 2. 飛天糖霜(フェィティエン・タンシュアン) 口溶けの軽い砂糖菓子。700メセタ
-3. 思燕糕(シー・イェン・ガオ) 「思燕」という言葉で「燕をう」という意味があります。「糕」は蒸し菓子を指します。包装をほどくと白い蒸気が立ち上がり、温かくもっちりとした食感としっかりした甘さが特徴です。800メセタ +3. 思燕糕(シー・イェン・ガオ) 「思燕」という言葉で「燕をう」という意味があります。「糕」は蒸し菓子を指します。包装をほどくと白い蒸気が立ち上がり、温かくもっちりとした食感としっかりした甘さが特徴です。800メセタ 
-4. 鶏蛋仔(ガイ・ダンジャイ)蛋 ベビーカステラを繋げたような見た目が特徴的です。ほんのり甘く、ぽこぽこの中は半分は生地、半分は空洞になっていてサクサク・もちもちの食感を味わうことができます。900メセタ+4. 鶏蛋仔(ガイ・ダンジャイ) ベビーカステラを繋げたような見た目が特徴的です。ほんのり甘く、ぽこぽこの中は半分は生地、半分は空洞になっていてサクサク・もちもちの食感を味わうことができます。900メセタ
 5. 羽香杏仁(ユーシャン・シンレン) 「羽の香り」をイメージした杏仁豆腐風のデザートです。軽やかで優しい味わいです。700メセタ 5. 羽香杏仁(ユーシャン・シンレン) 「羽の香り」をイメージした杏仁豆腐風のデザートです。軽やかで優しい味わいです。700メセタ
 6. 肉まん(ニク・マン) みんなご存じの肉まんです。ジューシーで美味しいです。600メセタ 6. 肉まん(ニク・マン) みんなご存じの肉まんです。ジューシーで美味しいです。600メセタ
行 236: 行 322:
 調査終了。 調査終了。
  
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 +
 +--> ログ#
 +https://share.evernote.com/note/2391bb91-c845-222c-7db7-96422f3b65cd
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 +
 +--> その後#
 +風が、墓地の高台を抜けていく。
 +鈍い月光が雲間からのぞき、墓碑に刻まれた名をかすかに照らした。
 +シァイェンは静かに立っていた。
 +手には、小さな包み。
 +それをほどくと、白い蒸気が夜気に溶ける。ウタウから貰ったシーイェンガオ。思燕ー「燕を想う」という意味が込められた母が作っていた菓子…らしい。叔母らしき人から聞いた。
 +「……なんかさ」
 +ぽつりと、笑うように呟いた。
 +「私に気持ちが伝わるようにって、頑張ってお菓子作ってたんだってね。
 +こんなの、リージョンを超えて広まっても私、気づかないのに……馬鹿じゃないの。」
 +ひとくち、食べる。
 +甘さが舌に触れ、ゆっくりと広がる。
 +その味は、記憶のどこにもないのに、なぜか懐かしかった。
 +「……それに、甘すぎ。私、甘すぎるのは好きじゃないって……十八年も一緒にいて気づかないなんて。
 +ほんと、どうかと思う。」
 +風が吹く。
 +枝葉が擦れ、遠くの鈴虫が鳴いた。
 +その音に紛れるように、シァイェンの声が震え始める。
 +「……私もさ。お母さんが私のことを大切に思ってるなんて、全然気づかなかった。
 +あはは……お母さんの血かな、これ。二人して鈍臭すぎる。」
 +彼女は肩を震わせ、こらえきれずに嗚咽を漏らした。
 +月が、雫のように光を落とす。
 +「……っ、なんで……なんで私、もっと早く知ろうとしなかったんだろう。
 +お母さんが私を大切に思ってくれてたことも……お酒が好きだったことも……
 +全部、全部人づてで。
 +なんで……死んじゃったの……。」
 +言葉の切れ端が、夜の中に吸い込まれていく。
 +彼女は袖で目元を拭い、小さく息を吐いた。
 +「ねえ、お母さんたちさ……昔、いろんな道場の人と交流してたんだってね。
 +一緒に訓練したり、お酒飲んだりして。
 +…私ね、今からでも……お母さんたちのこと、知りたいって思ってる。
 +だからこれから、いろんな島に行って……お酒を飲んで、お母さんたちの話を聞いてみようって。
 +もう遅いかもしれない、ううん、きっと遅いんだよね。
 +でも……それでも、ちゃんと知りたいから。」
 +シァイェンは腰の酒瓶を取り出し、墓前の盃に二杯、静かに注ぐ。
 +液面が月を映し、淡く揺れた。
 +「これ、極上なんだって。どう? 美味しい?」
 +彼女はひと口、自分の杯を傾ける。
 +「おおー……穏やかで、気品のある香味。それに、すごい透明感のある澄んだ味わい……。
 +…生きてる間に、こういうことしてればよかったのにね。」
 +風が止む。
 +墓前の花が何かに答えるように微かに揺れた気がした。
 +シァイェンは酒瓶を置き、背を向けて歩き出す。
 +その顔には、まだ後悔の影が残る。
 +けれど、頬に流れる月光はどこかやわらかく、
 +まるで、何かがようやく解けていくようだった。
 +
 +六年の歳月を超えて届いた声。
 +その残響が、彼女の心を少しだけ軽くした。
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