目次

「長年苦楽を共にしていたフェジエーから恐るべき事実を知らされたのはその夜であった。
 血相を変えて飛び込んできたフェジエーは私を見るやこう告げた。「王に報告します。先割れ山の」」
(シュルパ王の歴史書12章第2節の欠落直前より。
 現存する文書はフェジエーが死んだ後からの章であるため、フェジエーがなぜ死んだかは今も分かっていない)


???

一歩横に踏み出す。
その分ずれた身体の、かつて頭が存在した位置に投じられたナイフが通過していく。
発生した音と風が頬に伝わるような気がした。

後ろにいたものは飛び交うナイフを避けるためステップしを踏むように動き避けたようだ。
確実だが相手との距離を縮めるのに間が空いてしまう。

私は体勢を低くして一気に駆け続けた。
そして腰の刀を抜く、そしてすべてが終わる。
いつものこと。これが私の日常である。
私の足下にあるのはかつて人だったものが転がる。
「えへへ、お疲れ様ー」
こいつが来るのも日常。
「つぐみでーす、後始末は任せてくださいねー」

いつも終わりと共に現れる彼女が、私は嫌いだった。


ハルファのとある場所、とある時間

「ない」
「ないないない!もしかして・・・」
「・・・落とした?」
ひとり、少年は途方に暮れる。

これをきっかけに後日、ラッピー捕獲隊に新しい任務が通達された。
忘れられた落とし物-本編

本編のあらすじ

少年の落とした電子ノート(タブレット)を拾いに行くことになったラッピー捕獲隊。
途中で同じ区域で活動していた

の救援に成功しつつ、ついに電子ノートを発見。
しかしそれは少年のものではない謎の電子ノートだった。
そこにはつぐみが知っている(ハルファにはない料理である)タスティーヤのレシピと、
「世界で一番大嫌いなつぐみへ」
と書かれていたのだった。


???

「任務にご一緒できて嬉しいですーよろしくお願いしますー」
つぐみがお辞儀をして挨拶をした。すこし高めの身長が低くなる。
私は何も言わずに返した。なぜこんな大事な任務につぐみを連れていくのか、そちらの疑問が尽きない。

つぐみは一言でいえば落ちこぼれだった。本来は私側の人間であるはずなのに
全うできないために雑用をこなす側になっている。
「あれを使うために、ということか」
私は考えられるひとつだけの可能性に思いを巡らす。それならば私とやや背格好が似ているという意味では適格だ。

「準備は出来てますー長旅になるかもですけど荷物は私が持っていきますー」
楽しそうに話すつぐみ。まるでハイキングにでも行くかのようだ。
「あ、大事なレシピとかもーその板に入れましたーこんな便利なのあったんですねー」

電子ノートのことを板という。私は意に介さずにノートを開く。
一通り眺めると、毒物のレシピの欄にタスティーヤのレシピがある。つぐみも好きな食べ物だった。
勝手に書き加えたのだろう。

本当に仕事だというのを理解しているのか?私は嫌いなつぐみとの仕事にため息しか出ないでいた。