「記憶喪失の男が呟くように言った。
先日ひとつ記憶を取り戻した。ただこの記憶は取り戻したのか。それとも思い込みなのか分からない、と」
(オリバー・ディタンズ「記憶の道」の一節より)
つぐみの利用方法は石を渡されたときに理解した。私の身体の代役なのだと。
長く歩いていたので休憩をとることにし、火を起こして近くにある岩に腰を掛けていた私は腰につけた袋から石を出す。
手のひらに収まる小さな結晶のような石。内部に赤色の液体が封じ込めるように入っている。
この石をかざして念じれば、その物の身体を乗っ取れるのだと。理屈は分からない。ただこの仕事の切り札になるかもしれない、と言われたものだった。
石から目を離し、向かい合うように座るつぐみを見た。
背恰好は似ている。髪の色や瞳の色は違うので見分けがつかない訳ではないが、逆にそこを見なければ一瞬分からないかもしれない。
「どうしましたー?」
相変わらず間延びした口調でこちらを見て聞いてくるつぐみ。
「いや、何でもない」
言葉短めに答える。
「そうですかー?えへへ、何かあったら何でも言ってくださいねー」
そういうと変な方向を見るつぐみ。
いつものつぐみの癖だった。
アークスの活動には必ず付きまとう、死。
任務途中で無念の死を遂げたアークス達の遺品を回収するのもまたアークスの仕事。
その回収任務をラッピー捕獲隊が担当することになったのが今回の物語。
行方不明あるいは死亡認定されたアークスの遺品を探しに行く任務を行うことになったラッピー捕獲隊。
二手に分かれて探し、当初依頼されていた
の遺品を確認。またそれ以外の道具も順調に探し当てる。
途中でテドラサイト愛好会のリーダーが川に落ちて凍えそうだと知らせを受けて救出に向かおうとした矢先、
つぐみすこし一行と離れた隙に大型ドールズと鉢合わせる。
つぐみを助けに行く一行が見たのは、倒された大型ドールズと、明らかに様子がおかしいつぐみの姿であった。
襲い掛かってくるつぐみと交戦することになり、何とかつぐみを先頭不能に陥らせることが出来たが
後日つぐみに聞くと当時のことは覚えていないと言ったのであった。