「私は、つぐみが嫌いだった」
(???)
「観念しろ」
暗殺者が自分の傷の血をを拭いながら、カタナをターゲットに突き付ける。
「バカな、この私が・・・」
ターゲットは息を切らし、腹部を抑えながら睨みつける。
「恨みはないが・・・いざ」
そう言って突き刺そうとする、が。
「かかったな!」
ターゲットはニヤっと残忍な笑みを浮かべたかと思うと、床を踏み抜く。
床からカタナが飛び出す。罠だった。
「なっ・・・!」
暗殺者は完全に不意を突かれていた。自分の運命を覚悟し、頭の中で思考が巡る。
「おそらく直撃、だが即死には至らない。
ならば例の石を持ってつぐみの体を奪って・・・」
そこまで考えた瞬間、
「あぶない!」
不意に声が聞こえたかと思うと、暗殺者は自分の体があらぬ方に押し出される衝撃を感じた。
御霊 伊三郎。
悪霊と契約を交わし、他人の身体に魂を映る能力を得た一族の棟梁。
そのため彼らの身体のほとんどは他の一族の身体を利用しているため身体の血縁関係は薄く、
盟約を交わしたものが同じ一族となる。
代々、名前に数字が入るのが伝統と言われている。
闇縫一族はじめ、多くの一族と抗争に至っており、
今回は棟梁の伊三郎の命を狙い、つぐみとつぐみのご主人様は暗殺に来た。
しかし返り討ちに遭い、つぐみは落命。
ご主人様は伊三郎と刺し違え致命傷を与えることに成功。
逃げる伊三郎と取っ組み合いになる内に、突如現れた次元の裂け目に二人で落ち、
伊三郎の身体は消滅、しかし伊三郎の魂はご主人様に入ってしまう。
そしてご主人様は裂け目を抜けてハルファに落ちた際、記憶を失ったショックで
自分を落命したつぐみだと思い込んだ。
本物のつぐみはご主人と入れ変わることなく、意識が白い石に吸い込まれたのだった。
つぐみの記憶のすべてを取り戻し、しかし同時につぐみの中に眠っていた伊三郎が
完全に目を覚ます。
仲間たちの戦いにより伊三郎は追い詰められ、最後につぐみの身体を乗っ取ろうとする。
しかし伊三郎もまた勘違いを起こしていた。
伊三郎が身体を乗っ取ったのは本物のつぐみではなく、つぐみのご主人様であった。
御霊一族が身体を乗っ取るには名前を知る必要があり、伊三郎は名前を教えろと要求。
しかし誰もつぐみのご主人様の名前を知らなかった。
なぜならみんなは彼女を「つぐみ」と呼んでいたし、本人も自分を「つぐみ」だと思い込んでいたから。
そうして名前を知ることを失敗、身体を乗っ取ることは出来ずに伊三郎は消滅した。
すべてが終わりつぐみのご主人様は、自分がつぐみではないことを思い出しながら、
ハルファではつぐみとして生きていくことを決める。
つぐみ「・・・さようなら『闇縫 みなと』」
誰にも聞こえないような小声で、伊三郎が最後に求めた自らの本当の名前を呼び、
過去の自分と決別するのであった。
えへへ、全部思い出せて。みんなありがとうね。
・・・あとは・・・。