からくり丸の最後

深い森の奥、日の光も木陰の合間を縫うようにまばらにしか差さないような場所。
大きな木の幹に右腕の肘から先がない、隻腕のキャストがもたれ掛かっている。
左手の上ではリスの親子が戯れているのをじっと見つめていた。

不意に物音もなく何人ものキャストが彼の前に姿を現す。
「からくり丸だな」
中心に立った、彼よりはすこし小柄なキャストが問いかける。
「ああ、そうだ・・・お前は、兄貴の息子か?」
「・・・ねじ丸の息子、今は機人丸(きじんまる)と名乗ってる」
そう短く返答する、それで彼は理解したらしい。

「やはり、な。兄貴によく似てる。後ろにいるのはお前の息子か?」
機人丸の後ろにいるキャストを差して問いかける。
「無駄話はやめよう、伯父上」
機人丸は制するように言う。
「里の決まりだ、抜け忍は始末しなければならない」
機人丸は自分の身長を超えるほどの長い一本の日本刀を出し、構える。
それは機鬼一族が誇る四大忍具のひとつ。「一文字」と呼ばれるカタナだった。

「ああ、そうだ」百も承知と言わんばかりに返事をし、左手の上のリスの親子を逃がす。
「このリスが成長するところまで居たかったんだがな」
誰にも聞こえないほどの独り言を呟き、左手で大型手裏剣「元八幡」を構える。

「返り討ちに遭ってくれるなよ?」
そう言って飛びかかるからくり丸。

この日、機鬼一族の抜け忍の一人が死に、
長らく一族の元から失われていた四大忍具のひとつ「元八幡」が取り戻された。