バレンタイン・ファースト…

『コンタクト』

皆様こんばんは、ラエルです。
突然ですがERの食堂からお送りしております。というのも…

ウタウ「あ、あー、あー…私、コレで女の子?」
ニニア「いや…あのよ。いいか?
なんで食堂にテメェ居んだよ。隣の奴もメソッドのナースだろ。何してんだ。」
ラヴィ「ニニアさん!バレンタインですよバレンタイン!!」
漆月「すまねぇラエル、リュヌに呼ばれてよ…
ばれんたいん…ってなんだ?」
リュヌ「……」(手に紫色のラッピングがされた小箱)

居ます。
それも、休んでろと言われてた患者が。君ですよウタウ。
そしてウタウのボディガードであるラヴィさんに…
デフテラの特別感染者、漆月。
挙句あの爆発蝶の化身であるリュヌという少女も。
一先ず…同じく重症患者ではあるけど何故か問題なく動くニニアと協力してウタウだけでも確保したいですが、今は止しましょう。

ラヴィ「というわけでウタウさんがどこに居るか分かりませんか?
チョコ渡したくて…」
ニニア「居るだろそこにっ!!!」
ウタウ&ラヴィ「何言ってるんですか、そこにはラヴィ(ウタウ)さんしか居ませんよ?
その目が色々見えちゃうのは分かってるから怖がらせないでください…;」
ニニア「だぁー!腹立つーー!!!;」

……ボケ倒されてそれどころではありませんか。というよりラヴィさんも気付いて…
いえ、無理ですね。今のウタウの変装はERの職員にすらバレていない程に巧妙…こういう所で技術を使う狡猾さ…起きても相変わらずです。

漆月「ん…リュヌ?それなん…お、おいリュヌ!なんだ…うぉ!!」
リュヌ「ん。」

あ。リュヌが漆月の手を握ったと思えば、食堂を出て行ってしまいました。
手に持っている小箱からはカカオマスの成分を確認。恐らくあれは…いえ、野暮ですね。
それよりもあの二人…は、厨房に入っていきましたね。今は女性達がチョコレートを作る日みたいなのですが…

ニニア「ったくあの天然二人はマジで…
うぉわウタウが二人!!?」
ラエル「ラフィエル・レプリカントのエアル型、ラエルです。
……話があります。バレンタインとは。」
ニニア「あ?バレンタインはバレンタインだよ。
本来は女性が好きな男性にチョコあげる日だがよ。男でも友チョコで渡す奴も多い。」

……理解しかねますが、そうですね。
せっかくの機会です。私も後でチョコを作り、ミドリに渡しましょう。

ニニア「あ、おいウタウモドキテメェも行くのかよ!?
ちょ、待ておい!」
ラエル「私はラエルです。
目標、チョコの製作をタスクに登録。行動を開始します。」

そして、ニニアが追うのを横目に私は食堂に。

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『サプライズ』

現在の状況。チョコ製作完了。
ラヴィを始めとしたナースの同僚から教えてもらい、オススメのお菓子であるというショコラケーキをワンホール製作、箱に梱包完了。搬送するのみです。
何故かミドリに運ぶことを伝えると、みんな凄く驚いている様子でした。

ニニア「っておい作って早々に出てくんかよ!?つかウタウ連れ戻すの…」
ラエル「目標反応、既に屋上に移動しています。
連鎖的にタスクをこなします。第一に漆月とリュヌの様子を確認。第二にミドリへケーキ搬送。第三に屋上でウタウ確保。」
ニニア「最初がクソ余計じゃねぇか!あぁいうの邪魔しちゃダメなんだよ…
おい聞けェ!!!」

ニニアが大分バイタル不安定ですがどうしたのでしょう。まぁいいです。
ともかくあの二人に危険があれば一大事です。見ましょう。
……の前に。

ラエル「ニニア。ウタウから貴方に。ハッピーバレンタイン。
ウイスキーボンボンです。」
ニニア「うぉなんだ突然…いや、え、は…はぁ!?なんてテメェが渡してんだよ、つか…
いやマジで止まれ、話聞け!待てってオイ!」

最初のタスクを完了、漆月およびリュヌの滞在する座標に移動を開始。
ニニアも追従。頼もしいです。

ニニア「だぁーもう止まれって言ってんだろうが!まずテメェはなんなんだ!ウタウに融通効かねえ機械みてぇな性格付けたようなタマしやがって!」
ラエル「停止の要請及び疑問に応答。
私は多目的適応型特殊生体兵器、ラフィエル・レプリカントのエアリオ適応型。会話の口調や思考はデフォルトに順次して話していますので…」
ニニア「長ェしウタウに似てる理由となってる情報が全然出てねぇ!;」

食堂を出てすぐに肩を掴まれ制止され、質問に対して答えたら更に怒られました。
……そういえば彼が問いたかったのはウタウに似ている理由ですか。

ラエル「私達のオリジナルがウタウに似ている事が起因されます、彼の遺伝子情報から私達が生まれたので似ていても当然です」
ニニア「お、おぉう?つまり…アイツみてぇのがまだ何人も居んのか?ヤバくねぇかソレ?」
ラエル「現在稼働しているラフィエル・レプリカントはハルファの自然系を守る適応進化が成されているので問題はありません。
因みに、稼働していない物には性別が女性のものも存在しています。理由として」
ニニア「いやいいからそれ!余計な情報出すな!よし行くぞ!!;」

制止したと思えば…ニニアの思考は読めませんね。ウタウが楽しいと言及する理由でしょうか。

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『キス』

現在地、エントランス。
二人の姿を確認、もう小箱を受け取った後みたいです。

漆月「なんだよリュヌ、俺にチョコくれるなんてよ
……つかなんでチョコなんだよ?」
リュヌ「今日がバレンタインデーだからだ。
……それと漆月、知っておるか。バレンタインデーで渡されたチョコは…そ、その。口移しで…渡した者に分け与える…という、その…」
漆月「おう。じゃあちゃっちゃと…いや待て今なんて?;」

情報データを確認…記載なし。ですが見守ることにします。
恐らく私に必要な未知のデータかと思われるので記録が必要。ニニアに協力を要請
ニニア「……いや俺はせんぞ。つか見んな。」
却下されました。

リュヌ「調べたもので、口移しで分け与えれば長生きをすると…漆月には長生きしてもらいたい。」
漆月「あのよ、吐くんならマトモな嘘吐け。
……よくわかんねぇがキスしてぇんだろ。ちょっとジッとしてろ。」
リュヌ「!」

言葉の後にまるで躊躇いもなく漆月はチョコを食べて、中腰になりました。
予測される次の行動が衛生面で問題があるので病院でしないでください。と言うわけで停…
ラエル「離してくださいニニア。風紀と衛生面に問題がある動きを停止するだけです」
ニニア「首のソレしまえ危ねぇから!!つかそれ飾りじゃねぇのかよ!!?;」

ニニアが私を阻止、こうしている間にも漆月は驚いて固まっているリュヌへと顔を近づけて…あの軌道はダメです。アウトです。絶対に止めなくては
漆月「……ってな、冗談だよ」

……私が妨害する前に彼自身が頰に軌道修正。周りの目線はニニアも含めて驚愕ばかりですが…

リュヌ「…………!!!!
ななつき、からかうな!」
漆月「ごぅ!!?」

そしてリュヌが顔を赤らめて漆月の顎下へ頭突き。効果は抜群だ。
頭突きに目を回して床に向けて漆月はキスをしたわけですが…

ニニア「……自業自得だな。次行くぞ。次はミドリんとこだ。」
ラエル「了解。」

気絶した漆月を病室へ続く道へ引き摺るリュヌの姿を横目に、私は局長室に移動を開始した。

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『ジェラシー』

局長室に移動後、手を止める。
既に先客が居ます…いえ、これは会議中。

ニニア「んぉ?って…ナギサと話してんな。
暫くは続くんじゃねぇか?まずウタウを連れ戻さね…ん、おいウタウモドキ?」

……この成分反応、カカオマス。
ナギサの荷物から…感知を確認しました。

ニニア「おいお前聞いてん…
ちょ、待て待て待ておま、黙って何してんだっ」

何故かは分かりませんが、今ここで、このショコラケーキを渡すべきと判断…ですが。
ニニアが制止し部屋への侵入を阻まれています、ERでは非常時以外の武装は禁止されており振りほどけません。

ニニア「取り敢えず今会議中なんだろ、後回しにして今は屋上行くぞ、な?」
ラエル「……」

彼の腕力は最重量級の大砲すら軽々片手で振るえる腕力、白兵戦では攻略不能と判断。
それに現在、自らの中に未知の精神現象を感知。解析…該当データは
ニニア「嫉妬するくらいの感情あんのは分かったから、ほら気持ち切り替えろ」

……あぁ、これが…
理解。そして、安堵。私は、やっぱりここに来て良かった。

ニニア「……落ち着いたか?ほら、ミドリにバレる前にさっさと行くぞ。
ったく…お前といいウタウといい意味わからん動きをするから心臓に悪い」
ラエル「……了解。
タスク順の変更、屋上に移動開始」

そのまま私は、音をなるべく消して屋上に移動開始。
ショコラケーキは…ミドリの部屋に後で置きましょう。

ラエル「ニニアに疑問。
チョコレートに関わる嫉妬心の増減。ニニアの親友に……がいるとウタウの記憶からサルベージ。」
ニニア「人の記憶を持ち込むな!つか持ち込めるもんじゃねぇだろソレ!
……んで……なぁ、……が別ん奴にチョコ渡すのは…まぁあり得そうじゃねぇか…?」

秘匿性の高い情報の為、出した名前の名称は伏せますが、思ったより割り切る様子で
ニニア「……正直な所あんまり見せびらかされたら嫌だがよ」
割り切っていませんでした。意外と子供っぽいですね。

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『バディ』

屋上に到着。二人は…

ラヴィ「女の子に変装してたんですね、驚いちゃいました…!」
ウタウ「こうでもしないと病室に閉じ込められちゃうからさ…
どう?結構自信作なんだけど…」
ラヴィ「とっても美味しいです、特にこのホワイトチョコのトリュフ!
ラッピングも…あ、コレってセフィロトの木!?覚えてくれていたのですね!」

確認。屋上の広い空間の端でチョコを交換している所でした。
……こうして見ると、普通の女の子なやり取りという物だとネーダは言うのでしょうか。

ウタウ「ラヴィの作ったハートのチョコも、かなり僕好みの味付けだよ。」
ラヴィ「はい!ウタウさん、いつもチョコレートはとても甘いものを食べていましたから!
……でも不思議です、それでも太らないん…ですよね。」
ウタウ「そうだよ…ミドリにも痩せすぎなんだし太れって言われてるのに…」

……解説。代謝能力とエネルギー消費率の問題。
我々もですが、ウタウは思考や身体の自浄作用によるエネルギー消費が多い。

ニニア「……女子会してんなよアイツら。捕まえる気失せるなぁ…;」
ラエル「ですが任務です。このままではウタウは屋上から逃げ出します」
ニニア「アイツは猫か何かか?いや猫でも屋上から逃げんわ!;」

今手を出しても危険なのは変わらず。ですが…
……チャンスが訪れる気配がありません、それも…私達の真っ直ぐ行きたいのにその進行予定ルートを阻むようにナース…ラヴィさんが居るから。

ウタウ「じゃラヴィ。みんなにチョコ渡しに行くから…
それまで少し、お願い」
ラヴィ「分かりました、届けた後…一緒に居ていいですか」

その二人のやり取りは、二人が頷いた後に終わって…ウタウは屋上から飛び降りました。私も後を追い
ラヴィ「チョコは、後でプレゼントするので今はごめんなさいっ!」
ニニア「どわっ!?」
ラエル「んっ!?」

……私は訳も分からないまま、気を失ってしまった。

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『レスポンス』

気が付けば私は…ウタウの逃走後10分後に再起動を完了していました。ラヴィは…ウタウの病室に移動しています。

ニニア「んぐ…ぁ?なん…え、何されたんだ俺?
……いやマジで何されたんだ、え。メソッドの奴等ってホントは暗殺部隊かなんかじゃねぇのか?」

同調。先程の動きといい普通の医療部隊からかけ離れた存在と確信。
ともかくウタウは外出。手元のチョコを齧りつつ周囲状況を確認。此処はER拠点の屋上ですね…ですが外部から視認されづらい場所に寝かされたようです。あと、ヘリが消えてます。

ラエル「……手元のチョコはいつのまに
いえ、いいでしょう。今は…」
ニニア「おい待て…
誰かがヘリで搬送されてきてんぞ!南西の方2キロ先!バイタル危険域、なんか喉から胃にかけてアレルギー性の炎症を起こしてやがる!」

……此処から、かつあの距離の患者の病状把握を!?
いえ、それより…

ラエル「……連絡記録あり、マグナス山でのキャンプ中にチョコを食べた男性が突然倒れた。緊急搬送の要請も通っているようです。病室もひとつ開けています。」
ニニア「俺らが寝てる間に急展開だなクソッ…
ウタウモドキ、運ばれてる患者のデータをチップに記録しといた、さっさとミドリに渡して来い。コレであの患者はすぐ助かる。」

義眼に着けている眼帯の端から小さなメモリチップを取り出したと思えば、ニニアはそれを私に押し付けてヘリポートに待機し始めました。
……そうですね、彼の目から得られるデータなら信頼ができます。なので。

ラエル「ありがとうございます、ニニア。」

そのまま私は、ミドリの許へと急いで飛んで行った。
私達の日常は…こういうトラブルに崩される事も多いけど、それだとしても諦めてはいけませんよね。
……後に、患者自身の薬品処方履歴等と、体質の状態変化から突発的なチョコアレルギーが発生したという事実が確認されました。

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ニニア「……誰が呼んだか診断医、か。
ったく、誰かは知らんが余計な機能をこの目に着けやがってよ。ありがとうよ…
どうせ着けたの、オメェなんだろ?なぁウタウ。」

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