その優しさに_目一杯の花束を

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その優しさに_目一杯の花束を [2023/10/19] – 作成 メンバーその優しさに_目一杯の花束を [2023/10/20] (現在) メンバー
行 108: 行 108:
 「……。」 「……。」
 無反応のラン。ミドリは続ける。 無反応のラン。ミドリは続ける。
-「それに、無意識か意図的かはわからないけど、君、ミイナのことをミイナさんじゃなくてミイナって呼んだよね。+「それに、無意識か意図的かはわからないけど、君、ミイナのことをミイナさんじゃなくてミイナって呼んだよね。
 「……!」 「……!」
 ランは無言を貫いてはいたが、通信の向こうの空気感が変わったことをミドリは察した。 ランは無言を貫いてはいたが、通信の向こうの空気感が変わったことをミドリは察した。
行 129: 行 129:
 センター長室の中で待っていたのは、ER副センター長のナギサ、ただ1人。 センター長室の中で待っていたのは、ER副センター長のナギサ、ただ1人。
 呼び出した張本人であるミドリがいないのである。 呼び出した張本人であるミドリがいないのである。
-「ミドリさんはこちらです」+「ミドリ先生はこちらです」
 ナギサはそう言うと、センター長室の壁に触れた。 ナギサはそう言うと、センター長室の壁に触れた。
 すると、ナギサが床を貫通して地下へ吸い込まれていった。 すると、ナギサが床を貫通して地下へ吸い込まれていった。
行 286: 行 286:
 「おっと、そうでした、自己紹介がまだでしたね」 「おっと、そうでした、自己紹介がまだでしたね」
 そう言うと、ミドリの目つきが一転して鋭いものに変わった。ミドリは自らの身分証を表示させた。 そう言うと、ミドリの目つきが一転して鋭いものに変わった。ミドリは自らの身分証を表示させた。
-「僕はセントラルERセンター長、兼…… セントラルER特別救助分遣隊、SReD部隊長のミドリだ。本件に関しては、シティ住人の人命保護、及び万が一の負傷者発生時の即時対応のため、警備局に代わり独自の権限において介入するものである」+「僕はセントラルER医局長、兼…… セントラルER特別救助分遣隊、SReD部隊長のミドリだ。本件に関しては、シティ住人の人命保護、及び万が一の負傷者発生時の即時対応のため、警備局に代わり独自の権限において介入するものである」
 「とくべつきゅうじょぶんけんたい?たかが救助隊のお医者さんが、何で許可証の提示なんて命令できるんだよ!」 「とくべつきゅうじょぶんけんたい?たかが救助隊のお医者さんが、何で許可証の提示なんて命令できるんだよ!」
 「だから言ってるじゃん、『独自の権限』って。ウチは『特別』救助分遣隊。人命が関わる事案については、警備局と同等の捜査権限を持ってるんだよ。窃盗とか動物を除く器物損壊とかは基本的にノータッチだけど、傷害とか殺人なんてのには必要に応じて介入することができるのさ。まして…… 今回の件は一歩間違えれば大規模テロ事案に発展、メディカル全体にコードブルー発動、なんて最悪の展開だって考えられるんだ。警備局が仕事しないなら、こっちが動くしかないでしょ?」 「だから言ってるじゃん、『独自の権限』って。ウチは『特別』救助分遣隊。人命が関わる事案については、警備局と同等の捜査権限を持ってるんだよ。窃盗とか動物を除く器物損壊とかは基本的にノータッチだけど、傷害とか殺人なんてのには必要に応じて介入することができるのさ。まして…… 今回の件は一歩間違えれば大規模テロ事案に発展、メディカル全体にコードブルー発動、なんて最悪の展開だって考えられるんだ。警備局が仕事しないなら、こっちが動くしかないでしょ?」
 ミドリはしれっと警備局を批判しつつ、さらに続ける。 ミドリはしれっと警備局を批判しつつ、さらに続ける。
 「そんなこと言ってる間に、君の顔写真を撮影して、司令部のデータベースに照合させてもらったけど、君やっぱり特例許可証発行されてないよね?なのに何で武器が暴発したのか、ぜひ事情を聞かせてもらいたいところだけど?」 「そんなこと言ってる間に、君の顔写真を撮影して、司令部のデータベースに照合させてもらったけど、君やっぱり特例許可証発行されてないよね?なのに何で武器が暴発したのか、ぜひ事情を聞かせてもらいたいところだけど?」
-ミドリは男に別の画面を見せた。そこには男の顔写真やプロフィールとともに、ある一文が書かれていた。「拠点内での武器使用における特例許可:×」と。+ミドリは男に別の画面を見せた。そこには男の顔写真やプロフィールとともに、ある一文が書かれていた。 
 + 
 +「拠点内での武器使用における特例許可:×」と。 
 それを見た男は、わなわなと震え、そして。 それを見た男は、わなわなと震え、そして。
 「あああああああああああああああ!」 「あああああああああああああああ!」
行 423: 行 426:
 彼女が大きく息を吸い、口を開いた。 彼女が大きく息を吸い、口を開いた。
 「初めまして、本日付でSReDに着任し、特別対応班の指導役を務めることになりました…… ミイナ、レーヴェンです!」 「初めまして、本日付でSReDに着任し、特別対応班の指導役を務めることになりました…… ミイナ、レーヴェンです!」
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 +====あとがき====
 +とあるゲーム実況者さんの実況を見ていた時、そのゲームの中で、「正しいことをした人や優しい人が馬鹿を見る」というような描写がありました。それを見たのがきっかけで、「優しい人が報われる話を書きたいなあ」と思ったのがきっかけで書き始めました。
 +まさかこんなに長くなるとは思ってなかったですけどね……
 +今回は自分の書きたい内容を前面に押し出したが故、設定面はかなりの粗があると思います。そこは目をつぶってもらえれば……
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 +ラストの結末はとても悩みました。ミイナを指導役にするというのは決めていましたが、SReDの隊員にするか、それとも警備局からの期間限定での出向にするか、悩みに悩みました。
 +最終的には、ミイナに幸せになってほしいという気持ちが勝り、SReDの隊員にしました。ただ正直、ミイナだったら警備局に籍を残すという選択をしそうな感じがします。果たして彼女はSReDに馴染んでいくのか、それとも警備局に戻るのか、もしもう一度彼女のことを描くんだったら、その辺は気になるところですね。
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 +最後に、優しい人が報われる、そんな世界になることを祈って。