「もうすぐか…。」
壁に掛けられた時計に目をやり、時計の針は約束の時刻が迫っていることを示していた。
部屋は掃除したし、応接室も綺麗にした。あとは待つだけ…なんだけど。入口の前で後ろで手を組み、立ちながら深呼吸をする。
再び時計を確認したが、まだ2分しか経っていない。なんとなくソワソワして手櫛で前髪を整え、そしてふと気づく。
入口の前で立って待ってたら、相手に気を遣わせてしまうだろうことに。
そうして慌てて箒を取ってきて応接室の床を再度掃き始めた。
掃除を始め数分後、扉の開く音がした。
エルピス あ、いらっしゃい…!!
榊 光一 /mn15 うん、こんにちは。よかった。ここで合ってたんだ
榊 光一 うんと、掃除中?手伝おうか?
エルピス あ、や、大丈夫です!もう終わったようなものなので…!!
エルピス えっとじゃあ、こっちの部屋に来てもらっていいですか?
箒を手早く片付け、私室に案内をする。
私室には椅子やベッドやキッチン、そして台座に置かれた水晶がある。
榊 光一 そっか、あ、うん。お邪魔します
エルピス テクニックでしたよね?あんまり教えられることはないんですけど、今から始めますね…!!
エルピス あ、どっか適当に座ってください。ベッドでも椅子でも…
榊 光一 /mn15 うん、えっとここはエルピスさんの部屋なのかな・・・部屋の中で大丈夫?色々・・・
エルピス あ、そうそう、私の部屋です。大丈夫だと思います。設備がこっちにあったので…
榊 光一 /mn15 ううん、僕はここで大丈夫だよ、緊張するしね
榊 光一 /mn15 うん、テクニックで部屋荒れないかっていうのと・・・僕も一応、男なんだけど入ってよかったのかな?って
エルピス あ…テクニックを実際に撃つとさすがに大変なことになっちゃうのでこの水晶を使います…!
この水晶は以前に紅蓮さんから修行をつけてもらった際に借りたものだ。
榊 光一 ふんふん?
エルピス あと、先生とか桃君も入りますし、光一君なら別に…
榊 光一 /mn15 そうなんだ・・・うん、ありがと
エルピス あ、じゃあ講習始めますね…
榊 光一 /mn15 うん、よろしくね
エルピス テクニックについての基本的なことは光一君も知ってると思うので、紅蓮さんから教わったことを話していきますね
榊 光一 ふんふん?紅蓮さんが得意なんだね?
エルピス あ、そうですそうです
エルピス テクニックに属性が6つあるのは知ってると思うんですけど
榊 光一 うん、そこは確かに習ったね
エルピス その中でもチャージするまでに時間が一番かからない属性ってなんだと思いますか?
榊 光一 うーんと・・・火属性かな?フォイエとか
エルピス あ、そうなんです。人によって違いますけど火属性が早いって一般的には言われているそうです
エルピス で、なんで早いのか―ってところなんですけど
榊 光一 うんうん、確かにそんな傾向ある気がするね?うん?
エルピス 紅蓮さんが言うには、イメージのしやすさが影響してるそうなんです
榊 光一 イメージのしやすさ・・・ふんふん?
エルピス で、そのイメージを素早く投影できるように練習する道具がこの水晶ってわけです
榊 光一 /mn15 なるほどね・・・イメージトレーニング用の道具なんだね
エルピス イメージしてフォトンを流すと水晶の中で像を結ぶんですけど、それをかき乱す加工をしてあるみたいで
エルピス この中ではっきりとしたテクニックのイメージができれば自ずとテクニックがすぐに撃てる…らしいです
榊 光一 ふんふん、この中でテクニックをイメージできれば・・・そう聞くと簡単そうに見えるけど難しそうだね
エルピス あ、そうなんです。結構難しくて、私も最初は中々上手くいかなくて…
エルピス あ、じゃあ一回とりあえず水晶に手をかざしてイメージをしてフォトンを流してみてもらっていいですか?
榊 光一 うん?えっとこういう感じかな?【水晶に右手をかざして】
エルピス /mn15 あ、そうですそうです。その感じでお願いします
榊 光一 【そのまま火属性のフォトンをイメージして流し込む】
エルピス 【水晶の中に火が灯るが風に吹かれたように火がなびいている】
榊 光一 ん・・・確かにかなり消されそうになるね【消えないようにさらにフォトンを流しつつ】
エルピス そうなんです…。特に椅子とか机とか物体の像を結ぼうとすると難しいのでそれで練習したりしてます
榊 光一 あ、物体もイメージすれば投影されるんだ?
エルピス あ、そうなんですよ。でも紅蓮さんはその水晶の中で人を動かしてましたね…
榊 光一 人?そんなことできるんだ・・・すごいね?
エルピス 反復練習で着実に伸びていくものではあるみたいなので、私も毎朝時間を取って練習してます
エルピス 私も3カ月くらいはやってると思いますけど全然そこまでできる気はしないですね…
榊 光一 /mn15 エルピスさんで出来ないんだったら僕も全然駄目そうだね
エルピス どうでしょう…光一君ならできそうな気もしますけど…
エルピス あ、で私から教えられることってこのくらいしかないんですけど良かったですか?
榊 光一 /mn15 ううん、全然。こういう方法があるなんて知らなかったから・・・実戦で勉強ばかりだったし、すごい参考になるよ
榊 光一 うんと試しに・・・【フォトンを水晶に流して、エルピスさんを一瞬映してかき消される】・・・う、悔しいな
エルピス /mn15 私もこれは本でも読んだことなかったし、初めて効くことだったので目から鱗でした
榊 光一 /mn15 エルピスさんは本でも読んで勉強したんだ?偉いね
エルピス あ、中々人とかは難しいですよね。目をつぶって正確にイメージできるのはそういうトレーニング積まないと難しいですから
榊 光一 正確にイメージ・・・結構エルピスさんは見てるつもりなんだけどな【再挑戦して、さっきよりすこし映るがまた消える】
エルピス アークスの研修生になった当時とか他の人よりも運動能力とか全然低かったので他で努力しないとーって感じだったので…
榊 光一 /mn15 うん、向き不向きもあるけど・・・そうやって頑張れるの凄いなって
エルピス /mn15 そうですか? ありがとうございます
榊 光一 /mn15 うん、そういえば今日の服装も可愛いね。そのリボン気に入ってる?
エルピス /mn15 ありがとうございます。あ、そうなんですこれ今のお気に入りですね
榊 光一 /mn15 うん、よく着けてる気がしたから・・・似合ってるよ
エルピス 光一君は今日は道着?なんですね。お仕事の帰りですか?
榊 光一 /mn15 あ、うんうん。それにテクニック教わるつもりでいたから仕事の服で来ちゃった・・・あはは、座学の発想がなくて。
エルピス あ、なるほど…。私も座学じゃないと中々教えられる自信が無くて…
エルピス あ、その水晶は紅蓮さんのところにまだ余ってるはずなので言えば貸してくれると思います
榊 光一 ううん、僕の方が実践の発想しかないのが悪いから気にしないで?あ、そうなんだ
エルピス もしトレーニングされるんだったら紅蓮さんに言ってみてください
榊 光一 【手をかざして闇のフォトンを流し込んでメギドを発生させて】ふんふん・・・
エルピス 普段から結構実戦形式が多いんですか?
榊 光一 あはは、そうだね。うんと・・・まあ僕の家も基本的に座学より実践して覚えるって感じだからね
エルピス あ、そうなんですね。実戦から学べる事の方が多いと思いますけど、その分リスクが多いから難しいですね
榊 光一 /mn15 そうだね、ケガしたりするしね・・・アークスがちゃんと勉強で学べるようになってるの、凄いなって
エルピス 教育システムってところではVRとかも今はありますしね
榊 光一 ああ、VR凄いよね・・・本当にあるみたいだし
榊 光一 でもこうやって練習する方法・・・なるほどねエルピスさんはどれぐらいできるの?
エルピス あ、私は…そうですね。そこのベッドとかなら20秒前後って感じですね
榊 光一 ふんふん?やっぱり思い入れのあるものなら正確にイメージできるのかな
エルピス 少しずつ早くなってはいるんですけど…。あ、紅蓮さんは2秒くらいです
榊 光一 /mn15 それは、早いね・・・?
エルピス そうなんです、紅蓮さんは別格って感じですね…
榊 光一 ん・・・【徐々にイメージしてカタナを投影させる】
榊 光一 【かなり時間かけてカタナがすこし映って消える】・・・ん、本当だ。時間かかるし難しいね
エルピス カタナ…槌使ってましたけどやっぱりカタナが馴染み深いですか?
榊 光一 /mn2 うん、まあアークスでもファントムで使うけど・・・母星での本業でも使うからね
エルピス あ、かすみさんもカタナ使ってますもんね
榊 光一 /mn15 ああ、姉さんも使ってたからね
エルピス 今日のトレーニングって、近づかれたら弱いフォースが近づかれても多少は対応できるようにっていうのもあるんですけど
榊 光一 うんと、姉さんの前の仕事も・・・というか聞いたことあるんだっけ?・・・うんうん?
エルピス /mn15 光一君は接近されても大丈夫そうですね。カタナも使えますし
榊 光一 あはは、ありがとう。まああまり使わないようにというか・・・ちょっとね
エルピス あ、なんでしょう他の人から少しだけ…?
榊 光一 うん、言っちゃうと僕の家は代々暗殺一家で・・・姉さんは元、で僕は母星では現役、かな
エルピス なるほど…
エルピス 光一君はその…本業続けたいって思いますか?
榊 光一 エルピスさん怖くない?こっちの人、結構反応薄くて意外なんだけど
榊 光一 うーん、どうだろ。今のところ本家を継げるの僕だけだし・・・よほどのことが無ければ続けるかな?
エルピス あー…私も捕獲隊入ってからそういう人たち何人か見てるのでちょっと慣れてきたった感じかもしれないです
エルピス 今は怖さはないですね…
榊 光一 /mn15 そっか・・・ありがとうね
榊 光一 /mn15 エルピスさんにそう言われるのはすごいほっとしたよ
エルピス あ、そうなんですね…。結構恨みを買いそうな仕事なのでちょっと心配はありますけど…
榊 光一 /mn15 うーん、確かにね。気を付けないと・・・僕はだいぶ守られてる感じだけどね
榊 光一 そろそろちゃんとしないとなって・・・
エルピス あ、そうなんですね…。守られてるってことは対策みたいなのはあるんですね、よかった…
榊 光一 /mn15 うん、一応何百年も続いてる古いお家だから
エルピス 何百年ですか…長いですね…
榊 光一 うん、だから僕の代で終わりに・・・はならないだろうけど、でも繋がり切らないようにしないとなって
エルピス なるほど…
榊 光一 /mn15 ・・・あ、ごめんね。こんな話して。つまらない話だったね
エルピス ううん、そんなことないです…。私も聞きたかったので…
エルピス あ! 私お茶とか出してないですね…。えっと…なんか飲みます?
榊 光一 /mn15 ・・・うん。ありがとう。エルピスさんにはいつか話しておきたいなって。あ、じゃあお言葉に甘えようかな
エルピス えっと…紅茶か珈琲か…。冷たいのも温かいのもありますけど
榊 光一 /mn15 あ、エルピスさんと同じので・・・手間かけたくないし
エルピス /mn15 あ、じゃあ紅茶の温かいやつにしますね…
榊 光一 /mn15 うん、ありがとう
エルピス あ、じゃあこれどうぞ#紅茶のカップを一個渡し
榊 光一 うん、ありがとう【カップを受け取り】
榊 光一 ん・・・良い香りだね
エルピス あ、ホントですか?私ベルガモットの香りが好きなのでアールグレイ買い置きしてて…
榊 光一 /mn15 ふんふん、こだわりあるんだね。紅茶好き?
エルピス 紅茶は好きですね、落ち着きますし…。光一君はどうですか?
榊 光一 /mn15 うん、僕も好きだよ。落ち着くし・・・なんていうか、気分変わるよね。
エルピス あ、そうなんですよ。気持ちのリセットができるのもいいところですよね…#紅茶飲みながら
榊 光一 うんうん、大事だよね・・・そういえば部屋の中でも手袋してるんだ?
エルピス ああ、うん…そうですね、ちょっと色々あって…
榊 光一 肌弱かったり・・・?この前も手を守ってたよね
エルピス あ、そういう訳じゃないんですけど…昔、手を握って迷惑をかけちゃったことがあって
昔、体調を崩したとき、手をつないでとせがんだばかりに緊急搬送された執事を思い出す。
ゴートには本当に昔から迷惑ばかりかけちゃってるなぁ、私。
榊 光一 ふんふん?
エルピス それ以来、素手で手を触るとちょっと過呼吸みたいな症状が出ちゃって…
榊 光一 そっか・・・今でも?
エルピス 今でもですね。他の人に協力してやってみたんですけどどうもダメで…
榊 光一 /mn15 そうなんだ・・・僕でもダメかな?別に迷惑かけられても気にしないけど
榊 光一 /mn15 あ、無理にとは言わないけど・・・協力させてほしいな
エルピス うーん…そうですね…。じゃあお言葉に甘えて…
榊 光一 うん・・・ダメだったらすぐ言ってね【手を差し出して】
榊 光一 【手袋を外して】
エルピス あ、はい…あ、ちょ、ちょっと待ってくださいね…
大丈夫大丈夫…深呼吸をしてそう自分に言い聞かせる。
榊 光一 /mn15 うん、大丈夫だよ。落ち着いて
エルピス えっと…じゃあ行きますね#指を掴んで
榊 光一 うん・・・
手に触れた瞬間、過去に手を握った執事から流れてきた波打つような生命力の感覚が脳裏に蘇る。
それと同時にうるさいくらいの心臓の鼓動の音が聞こえ、呼吸が上手くいかず、息苦しさを感じる。
エルピス …ちょ、たぶんダメです…#パッと手を離し
榊 光一 うん・・・大丈夫?苦しくない?【背中を軽くさすろうとして】
エルピス あ、ごめんなさい…ちょっと…心臓が…#さすられながら
榊 光一 大丈夫?うん、ごめんね【優しく撫でて】
エルピス と、こんな感じで…中々克服できなくて
榊 光一 そっか・・・うん、大丈夫?落ち着いた?
エルピス あ、はい…もう大丈夫です
榊 光一 良かった、物とかは大丈夫なんだ?人がだめ?
エルピス あ、物とかは全然…精神的なものなので人でも私が気づいてなければ大丈夫なのかも知れませんけど…
エルピス 普段はちょっと弊害があるのでやっぱりグローブがないと難しいですね…
榊 光一 トラウマだとそうなのかもね、うん・・・克服できるといいけど。
榊 光一 そっか、グローブそういう理由だったんだね
エルピス そうですね、克服…したいですね
榊 光一 大丈夫、いつか克服できるよ、うんうん
光一君は私が落ち着くまで一緒にゆっくり待っていてくれて、落ち着いたのを見届けると帰って行った。
上手くできただろうか、私は一人になり静かになった部屋でベッドに腰をかけて今日の出来事を振り返っていた。
そして、振り返っているときに思い出したことがあった。
なんで私は紅蓮さんを紹介しなかったんだろう、と。テクニックを教えてほしいと言われたときに自分より紅蓮さんが教えた方が光一君にとっていいはず、そういう考えはたしかに頭をよぎった。
でもなんとなくそういう気分になれず私が一人で教えてしまった。なんでだろうとしばらく考えていたが答えの出ないうちに不意に耳に入ってきたドアの開く音で思考を中断する。
「ん…誰か来た?」帰ってきたキャスミさんが二人分のカップを見てそう言った。
「あ、えっと…捕獲隊の人です。あ、そうだそうだ!この前、市街地に新しく出来た服屋さんがね!…」なんとなく恥ずかしくて話題を変えてしまい、新しい服屋の話やら家事やらをしていたらいつのまにか寝る時間になっていた。
ベッドに入り仰向けに寝転がる。隣からは規則正しい寝息が聞こえた。一緒のタイミングでベッドに入ったキャスミさんはもうすでに眠りについたようだった。
私はなんとなく寝つけなくて、なんの気なしに右手を掲げて光一君の手に触れたことを思い出す。
キャスミさんに手伝ってもらって手を握ったときとは違う、少しゴツゴツした手の感触。思い出すとまた鼓動が早くなっていき、それとともに顔が熱くなっていくことを感じた。
でも、いつもみたいに怖い感覚とは少し違う。それに少し頬が緩んでいくことを感じる。
もしかしてこれは…この感覚は…何度も本で読んだアレ、なのかな…。よし、今度文香ちゃんたちに聞いてみよう。
掲げた右手の甲を口元に下ろし、隣で寝てるキャスミさんを起こさないように、聞こえないように、小さな声でつぶやく。「これは…恋バナかな…?」
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やっほー!恋バナかなー!?でお馴染み(?)のエルピスと光一君のログに心情部分の付け足しでショートストーリーの練習をさせていただきました。
お付き合いいただいたキュキュさんにはとても感謝感謝です。
テクニックの講義部分は前に黒ゴマさんの紅蓮さんとセッションさせていただいたときの内容ですが、当時クラウドでやっていたためログが残っておらず認識違いがあるかもしれません…。その辺は間違ってる部分があれば後で内容改変するかもです。
以上、読んでいただいた方はありがとうございました!