「これは、私のものだ・・・!」
(????)
???
手元にある白い石は、あの石と対になるものだと言われた。
しかしその意味は正確には教えられていない。そもそも彼らとてこの石の意味を知らないのかも知れない。
あの石を精製した際に、必ず対でこの白い石も作り出される。
そしてこの石の効果は文献にほぼ出ては来ない。あの石の効果は何度も分かっているというのに。
「本当に意味は無いのかも知れないな」
ひとり呟く。精製される際の残りかすのようなものがこの白い石で、なんとなく両方持ち歩くようにしているだけかもしれない。あまり深く考えないことにした。
石を傍らに置いて、手荷物を確認する。
必要最低限の荷物に、重要な武器と、石と、そして鏡。
鏡もいざという時のため、念のためつぐみにも持たせている。
「戻りましたー獲物、とってきましたよー」
つぐみが帰ってきた。雪まじりの中、獣を狩りに行くといって出て行ったが、ちゃんと狩れたようだ。
獣程度ならつぐみでも狩れるのか、そう思ったが言わないでおいた。
「ふう、捌く前にー火に当たってもいいですかー?」
つぐみはごそごそと荷物を置いて火に当たり出す。
「・・・川、渡ったのか?」
そう聞くと
「えへへ、向こう側に見えたのでー」
そう笑って答えるつぐみ。見ると服を着ていない。
冬の川の渡り方は、衣服を脱いで渡り、服を濡らさないこと。確かに正しい。
「正しいが、そもそも渡らないことが最上の選択だ」
私はつぐみに言った。
「えへへ、そうですよねーごめんなさーい」
相変わらず笑って答えるつぐみに私は、何とも言えない気分になる。
「でもお仕事命ですからー!えへへ、ご主人様見習おうかなってー」
それは褒めているのか、と言い返してやりたくなる。
「つぐみ、ご主人様という呼び方はやめろ。名前で良い」
「えーご主人様って言うのー憧れたんですよー」
訳の分からないことを言うつぐみに私は呆れていた。
ハルファのとある場所、とある時間
「あ、ねえねえー?それでー実はちょっとお願いがあってー」
ラッピー捕獲隊のつぐみが、みんなに通信越しに声を掛ける。
「私、星渡りでー記憶無くしててーで、この前南エアリオで私の荷物っぽいタブレット拾ったじゃないー?」
「それでね?他にも何かないかなーって南エアリオに探しに行きたいんだー」
そう言ったつぐみの願いを受けて、ラッピー捕獲隊は南エアリオに行くのだった。
本編のあらすじ
再度荷物を探しに行った際に人が変わったようになったつぐみが襲い掛かる。
交戦に入ったとき、謎の声が聞こえる。
「弱っているうちに鏡を向けて顔を見せて」
「この人は自分の顔を見ることが出来ないから、弱っている時に見せれば意識を失うから」
何かを知っているような声の主は、ゼンが預かった白い石から聞こえてきているようだった。
???
「ご主人様、これは大事なお役目なんですよねー」
つぐみが火に暖まりながら言った。
「そうだ、どんな手を使ってでも果たさなければならない仕事だ」
たとえつぐみの身体を乗っ取ってでも、とは言わなかった。
「えへへ、そうですよねー。ご主人様」
そこで言葉を切るつぐみ。
「・・・どんな手、使ってもいいですからねー」
その言い方にすこしハッとする。見るとそこにはいつもと変わらない様子で笑うつぐみがいた。