瓶の中の手紙

瓶の中の手紙

 薬屋を営むウミンチュの彼は、ある日海流を漂う瓶を見つけた。中には一枚の便箋。内容を読むと、スクールの流行りで流してみたらしい。

 手紙の主である陸人種の彼女は、別の島に住む誰かに届くといいなと思って瓶詰めの手紙を出したらしい。

 彼は島に住む陸人種の男を演じて、彼女の住む近くの浜辺に届く海流に返事を乗せた。きっと彼女が読むことはない。そう思いながらも、ほんの悪戯心でやったことだった。

 しかし、数日後に瓶詰めの手紙は流れてきて、彼は返事を書いて、その返事をまた彼女は書いた。いつしか二人にとってそれは大事なものになっていた。

 彼女は「会いたい」と書いた。彼はそれから返事が書けずにいた。彼は彼女のことを知っているけれど、彼女が知っている彼は本当の彼ではないからだ。