過去3-終わりの始まり

【過去3:終わりの始まり】

〜数ヶ月後〜

「桜花が捕まった。」
全てはこの知らせから始まった。

反逆者達に告ぐ。
仲間の1人を預かった。夕刻までに王城前広場に全員来られたし。

「先生。これは罠だ。」
仲間の1人が言う。
「分かっている。けど、仲間を。家族を見捨てることだけは出来ねぇ…!!」
ここまで殺気が盛れ出している先生を見たのは初めてだ。
皆が圧倒されている。
「悪いな。俺は行く。お前たちはここにいろ。」
先生はそう言うと砦の扉の方へ向かおうとする。
追従する私。
「聞いていなかったか?俺一人で行くと言ったろう?」
先生は私に睨みを効かす。
「手紙ちゃんと読みました?全員で来いって書いてありましたけど?」
私も先生を睨み返す。
「…ハハッ。確かにな。これで全員来なかったら桜花も殺されちまうかもしれねぇ。」
仲間の1人が言う。
「死ぬ可能性が高いなら俺ら全員で行って生きる可能性を死ぬ可能性より高めてやろうぜ!」
「先生にだけ活躍させてたまるかよ!!」
「手足折られても付いてくぜ!!」
「手足折られたら足でまといだろ?付いてくんなよ」
仲間たちの士気がどんどん上がっていくのを感じる。
「まだ私たちを置いていって1人、ド派手に行くぜー。とか言いながら突貫して無駄死にするつもりですか?」
私は先生に睨みを効かせたまま言う。
「いや。死ぬ前提かよ…。俺一応リーダー張ってるんですけど…?強いつもりなんですけど?」
あ。悲しんでる。
「分かったよ。連れて行きゃいいんだろ…!ただしお前ら…」
先生は扉から皆の方に向き直し拳を掲げ
「1人もぜってぇ死ぬんじゃねぇぞ!!!」
大声をあげる。
うるさい。けど、不思議とやる気が出てくる。そして負ける気がしない。
先生のうるさい声は、こういう時には必要なのかもしれない。

〜王城広場〜

中央に巨大な噴水
その噴水を囲むように王国兵が並んでいる。
そして噴水の前に5mほどあるであろう木で作られた十字架。
その十字架に磔にされた桜花の姿。
そして私たちは王国兵と対面する形で陣取っている。
「す、すまない……」
血だらけの桜花。磔にされてだいぶ時間が経ったのであろう。
顔は生気は無く、両手足が縄により鬱血している。
「桜花ッ!!待ってろ!今助けてやるからな!!」
先生が王国兵に飛びかかろうとした。
そのとき
王国兵の隊長と思われし者が声をあげる
「待てッ!不要な犠牲は出したくない!穏便に済ますため、交渉することを提案するッ!!」
その声に先生の動きは止まる。
「交渉…だと…?」
「そうだッ!お前たちのリーダーをこちらに引き渡す代わりに、この男を解放しようッ!!」
見え見えの嘘だ。
相手はきっと桜花を、いや私たちも無事に帰すつもりはないだろう。
「応じよう。」
え?正気ですか先生?
「先生!!ダメだッ!!」
仲間たちが声をあげる
「黙れッ!俺1人の犠牲でお前らを守れるのなら、この命喜んで差し出そうッ!!」
先生のうるさい声が広場に響き渡る。
「ならば武器を捨て、ゆっくりとこちらへこいッ!!」
王国兵隊長の指示に従い、先生は武器を捨てゆっくりと王国兵たちに近づいていく。
そして噴水に近づきたとき、先生は行動を起こした。
噴水前にある桜花が磔にされている木の十字架を根元からへし折り桜花ごと十字架を持ち上げた。
「は…ぇ…?」
アホみたいな光景にアホみたいな反応をしている王国兵たち。
その十字架、鉄製の枷なども付いており目測200kgくらいあるかな。
私も先生のこと知らなかったら同じ反応をしていたのかもしれない。
先生は独自の手法で肉体を強化できる術を持っている。私もその術を伝授してもらったけど、鉄の鎧も貫手で貫通できるほど筋力が強化される。

「桜花奪還ッ!もう人質はいねぇッ!全員暴れてやれぇッ!!!」
先生の咆哮にも似たその声で私たちも武器を構え王国兵へと進軍する。
自慢ではないが私たち「死神の宴」の仲間たちはかなり強い。いくら相手の数が多いからといって並の王国兵に負けるほど弱くは無い。
そのためこの勝負、私たちの勝ちだとそう思えてならなかった。
戦闘が始まって無いはずの後方から味方の悲痛な声が聞こえるまでは…


過去4-世界の真実